悪意の遺棄
2025/09/05
「悪意の遺棄」とは、「自分勝手な都合で配偶者や家族をほったらかしにすること」とでもいええしょうか。夫婦はお互いに同居義務、協力義務、扶助義務を果たさなければなりません。悪意の遺棄は正当な理由がないにもかかわらずこれらの義務を果たさないことをいいます。「悪意」は、「このままではうまくいっていけないことがわかっていてもがそうとなっても構わない」という不誠実さのことです。具体的には「生活費を妻に渡さない」「わけもなく同居を拒否する」「健康なのに働こうとしない」などが挙げられます。もっとも、正当な理由があれば悪意の遺棄とは見なされません。実際の裁判ではこうしたケースは、これから紹介する「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」(108ページ〜)として判断されることが多いようです。
不貞
2025/09/05
「不貞」とは、配偶者以外の異性との性的関係をもつことで、つまりは「浮気」「不倫」のことをいいます。配偶者以外の異性との性的関係がゆきずりであっても、買春や売春であっても離婚原因になります。重要であったかどうかを判断するうえで、それが行われた時期ももっともですが、10年以上前に配偶者以外の異性と性的関係をもったことが、「不貞」に当てはまるかどうかは判断の分かれるところです。長年経過して今も結婚生活が続いているということは、相手方がその行為を許したとも考えられるからです。また、別居後に配偶者以外の異性との性的関係をもつことは不貞行為と認められない場合があります。別居状態であったということはすでに結婚生活が破綻していたとも考えられるからです。いずれの場合にも、裁判で離婚原因として認められるためには証拠が必要です。不貞をしている(していた)ことがわかる(推測できる)証拠の例・浮気現場の写真や映像・相手方が浮気を認めた発言を録音したもの・性的関係があったことがわかる手紙や日記・ホテルに入ったことがわかるGPSの記録・調査会社などの第三者の証言・浮気相手とのメール、LINE、通話などの履歴・SNS(Twitter、Facebook、ブログ等)の書き込み、閲覧
離婚が認められる原因は五つ
2025/09/05
離婚には「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」があります。初めの二つは、婚姻が破綻しているかいなかにかかわらず、本人同士が話し合って合意し、離婚するケースです。これに対し、後ろの二つは、裁判所による決定ないし判決による離婚です。この場合には、一定の離婚原因がなければ、裁判所は離婚を認めません。裁判で認められる離婚の原因は、民法にきちんと定められており、・不貞・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・回復の見込みのない強度の精神病・その他婚姻を継続しがたい重大な事由の五つが挙げられています。
「暴行・脅迫(DV)」(婚姻を継続しがたい重大な事由)の場合離婚原因の争点
2025/09/05
今回の事例では、離婚原因として「DV」があったといえるかが争点となります。
ドメスティック・バイオレンス(DV)からの脱出【家族構成】夫:会社員 44歳妻:専業主婦 38歳長女:小学1年生 6歳【キーワード】暴力、暴言、お酒(アルコール依存)、病院での診断、避難(別居)、脅迫、接近禁止
2025/09/05
美奈代さんは今もそのことを話し出すと体の震えが止まらなくなります。結婚してから7年。その間、夫から身体的な暴力だけでなく言葉の暴力も受け続けてきた、というのです。暴力が始まったのは、長女が生まれて間もなくのころだったといいます。「結婚前まではとてもやさしい人だったのに、何があの人を変えてしまったのかわかりません」美奈代さんはそういって日記帳を見ながら記憶をたどり始めました。最初期の暴力について記述があったのは、6年前の9月8日。長女の誕生からちょうど1か月後のことです。「その日、夫はお酒を飲んで帰ってきたのですが、お風呂の支度が遅い、といって怒鳴ったあげくに太ももを思い切り蹴りあげられたんです。しかも何度も。蹴られたときに転んで頭を流し台の角に打って、頭から血が流れてくるのがわかりました。そんなことするような人じゃなかったので、痛いというよりも、ただもうびっくりして」翌日、病院で全治10日間と診断されたそうです。帰宅した夫にそのことを報告すると申し訳なさそうに、「もう二度とこんなことはしない」と謝ったそうです。ところがその10日後、また事件は起こりました。今度はワイシャツのアイロンができていないという理由で顔を殴られたというのです。やはりお酒が入っていました。会社ではそのような態度は一切見せない夫が、こと美奈代さんの前にになると暴力を振るうのです。そして手を上げるだけでなく、言葉の暴力も加わっていくようになりました。だんだんと、美奈代さんの容姿にまで言いがかりをつけ始め、「子どもが不細工なのはおまえのせいだ」といい、美奈代さんの親がやっている自営の仕事についても職業差別のようなことを平気でいってくるそうです。そのようにして身体的暴力と言葉の暴力は、夫が酔って帰ってくるたび、1〜2週間に1回のペースで繰り返されていったのです。そして最後には、「おまえなんか死ね」「いつか殺してやるからな」と恐ろしいことを決まって口にします。まだ幼い娘も夫が暴力を振るうたびにおびえて泣き出し、夫が帰ってくると美奈代さんにしがみついて夫が見えないように後ろに回ろうとするそうです。美奈代さんは、夫の暴力がエスカレートし子どもに危険が及ぶのをおそれ、とにかく、「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝り続けるしかなかったといいます。お酒の入っていない日はごく普通に接してくれるため、もう大丈夫なのかも、と思いながら、またお酒が入った日に暴力が繰り返される日々。一時はそこまで怒らせてしまう自分が悪いのかもしれないとまで悩んだという美奈代さん。「今から思うと、外に相談できる人もなく、夫に心をコントロールされていたのかもしれません」と振り返ります。長年友人にも恥ずかしくてDV(ドメスティック・バイオレンス)の話をできなかったそうですが、あるとき思い切って友人に話すすとずっと楽になりました。とにかく、「そんな夫と一緒に暮らしていてもダメ」とアドバイスを受けた美奈代さんは実家の親に相談します。しかし、そのことが夫にばれて、「実家に火をつけるぞ。おまえの両親も殺してやる」と怒鳴られました。その言葉でいよいよ美奈代さんは、娘を連れて実家に避難することにしました。親に迷惑がかかるとわかっていながらもすがる場所はほかにはありませんでした。夫がどのような行動に出るかわからず怖かったので、警察にも相談し、何かあったときは110番する旨伝えました。夫はその後毎日のように実家にやってきては、「子どもに会わせろ。会わせないなら皆殺しにしてやる」と息巻き、応対した両親に罵詈雑言を浴びせていきました。最近は、両親も応対しないようにしていたそうです。外で夫が声を荒げた後、何やら物がぶつかる音が聞こえたと思って翌朝見てみると郵便受けがへこんでいたり、花壇が踏み荒らされていたりすることもあったそうです。そして、美奈代さんの両親は夫の言動を冷静に録音・撮影していました。美奈代さんは夫に郵送で離婚届への署名捺印を求めたところ、意外とあっさりと記入、判を押してくれた夫。そのときは気持ちが落ち着いていた日だったのかもしれません。「離婚後は一切付きまとわないでほしい」と代理人を通じて伝えたところ、「離婚した以上もう関係ないのだからもう迷惑をかけることはない」とまでいってくれ、美奈代さんはホッとしました。ところが、です。離婚成立後、しばらくすると脅迫メールが届き始め、電話による暴言がまた繰り返されるようになったのです。美奈代さんは、自分に近づくことを禁じる「保護命令申立て」の申請をすることで一刻も早く、安心して暮らせる環境を取り戻したいと考えました。そうしてようやく接近禁止命令が出たのです。とにかく、暴力から逃れられ平穏な生活を取り戻したことに喜びを感じている美奈代さん。慰謝料や財産分与のことはとても切り出せる状況ではなかったとのことで、まだこれから話合いをしていくとのことです。
興信所・調査会社を利用するときの注意点
2025/09/05
浮気・不倫の証拠収集や事実関係を把握するために、興信所・調査会社に調査を依頼されることもあるかと思いますが、その調査にあたっては、次のような点に留意をする必要があります。まず、配偶者と不貞相手の顔がはっきりと撮影できていること。さらに、顔写真や全身写真がさまざまな角度から撮影されていることも求められます。そして、配偶者と不貞相手が具体的にどのような行動をしているか、たとえば、手をつないだり、肩や腰に手を回すなどの行動がわかるように撮影をする必要があります。次に、密会場所の特定ができていることです。具体的には、ラブホテルやマンションの入り口に入ったとして、その入り口付近の写真だけでなく、ラブホテルやマンション全体の写真も必要です。それで初めて具体的にどの場所に二人で入っていったかの特定ができることになります。そして、その場所に入ったところだけでなく、そこから出てくるところの写真も撮影し、入った時間と出てきた時間がそれぞれいつであったのかも明確にしておく必要があります。アパートやマンションでは、同室に在室している現場を屋外から撮影するということも可能な場合がありますし、また、ベランダ・バルコニーに一緒にいるところや、そこに干してある洗濯物の撮影をすることで不貞関係を立証することが可能な場合もあります。せっかく興信所・調査会社に調査を依頼し、不貞関係を示す場面に遭遇したにもかかわらず、そこでの証拠のとり方があまりよくなければ、証拠としての価値がさほどないという可能性もありますので、興信所・調査会社と事前にしっかりと打ち合わせをしておくことが重要です。
離婚原因の争点
2025/09/05
今回の事例で離婚原因の争点になるのは、夫に「不貞」があったといえるかという点です。不貞とは、配偶者のある者が、自らの意思に基づき、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。
調査官調査
2025/09/05
このほかに、多くの場合、家庭裁判所の調査官が、夫婦の状況や子どもの状況などを調査し、報告書を裁判所に提出します。調査対象は、本人や子ども、同居の家族、保育園や幼稚園、学校、かかりつけ医などさまざまです。自宅訪問も行われます。調査官は、訴訟におけるそれぞれの主張をふまえて調査を行い、この調査報告書は、裁判所の判断に大きな影響を与えることになります。また、調査官調査では、それまでの生活状況や子どもの養育監護状況があらわになってしまうことになりますので、家庭において、子どもにとって生活しやすい環境づくりを心がける、子どもの安全や健康に気を配り、体調面については適切なタイミングで医師の診察を受ける、日ごろから親として保育園・幼稚園や学校などのかかわりに積極的にかかわり、担任の先生ともよい関係をつくっておく、など継続的に適切な養育監護を行っておく必要があります。積極的にかかわってくれる親族などがいる場合には、日ごろから積極的に補助してもらっておき、現実に補助が受けられていることを示すことも有用でしょう。相手方から子どもへの虐待を疑われている場合には、事前に子どもの体に痣や傷がないことを医師に確認しておいてもらい、カルテや診断書等書面にしておいてもらうことも考える必要があります。
自身が親権者としてふさわしく、一方、相手方が親権者としてはふさわしくないと考える理由
2025/09/05
子の生活環境、具体的なエピソード、子どもへの愛情、お互いの性格、お互いの育児に関する長所、短所などを具体的に記載します。
今後の養育方針や計画、非親権者と子との交流についての意向
2025/09/05
監護養育補助者の有無、いる場合はその方の詳細とその補助の内容も含め、具体的に記載し、養育、教育の方針を具体的に記載します。
子と相手方(夫または妻)との交流の状況
2025/09/05
別居後に面会交流などを任意で行っていたのであれば、その状況などを具体的に記載します。
子の状況
2025/09/05
子どもの育成歴、(別居前の)監護の状況、子どもの健康状態や性格、現在の生活状況(生活スケジュールや幼稚園や学校での生活状況も含む)などを具体的に記載します。